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【後編】開けようとすると、意外と重い。|関口黎のΛυΛμε.

関口黎 × 杉本一就 × 前原朋之|仕事で得た居場所と、ΛυΛμε.で向き合う自分。

透明な傘を手に、路地に立つ関口黎のモノクロのポートレート。
関口黎。ΛυΛμε.公式サイト掲載のポートレート。

仕事の中に、居場所ができた。

前原

ファーストキャリアはAOI Pro.じゃないですか。大学のときに制作会社でアルバイトをしていた、というところは聞いたけど、卒業してAOI Pro.に入るまでは、どういうルートだったんですか。就活はした?

関口

してはいるんだけど、動き出しがすごく早かったかというと、そうでもなくて。アルバイトをしていたので、制作会社のことも見えていたし、広告代理店やその系列の会社も含めて、幅広く受けました。

ただ、なかなか決め手に欠けて、ちょっと、だらっとしていた。そこに出てきたのがAOI Pro.でした。制作部への人材紹介をしている会社から紹介してもらって、まず契約社員として入って。そこから一年で、社員にしてもらいました。

大学四年から社会人になるまでの間って、気持ちがすごくロー(低い状態)だったんですよ。

前原

浪人して、大学入試へ向かっていたときのエネルギーと、その後の決め方が、あまりにも違うじゃん。その状態でAOI Pro.に入って、何か変化はあった?

関口

一年目から、いろいろな仕事をさせてもらって。それもあって、評価してくれる人が増えたんです。プロデューサーだったり、先輩だったり。頼ってくれる人もいて。

それまでに感じたことのない評価だったかもしれない。ある種の居場所というか、自己肯定感が上がるきっかけではあったと思います。

前原

AOI Pro.で、ちょっと居場所を見つけた。

関口

そう。自分が関わった競合プレゼンが、二、三年くらい、続けて通っていた時期もあって。もちろん、それは広告代理店さんのプロモーションのプランがあってのことだけど。

そうすると、代理店のクリエイティブの方にも名前を覚えてもらえるようになったりして。

それでも、会社を出た。

前原

AOI Pro.で居場所をもらったときぐらいの変化が、何かあった?

関口

AOI Pro.を辞める決断が、それだったのかなと思っています。THINGMEDIAに来るという決断が。大きな会社を出て、自分で挑戦できる場所に行ってみよう、と思ったので。

前原

THINGMEDIAに入ろうと思った決め手は、何だったんですか。AOI Pro.でも順調じゃん。契約社員から正社員になって、仕事も任されて、自分のポジションもできていた。その中で、何がきっかけだったの?

杉本

僕じゃないですか。

関口

杉本さんがきっかけだよ(嘘)

前原

なんかいいよね。「僕ですよ」って言うの。

杉本

馬鹿にしてますやん。

前原

してない。してない。いい話だなと思ってるよ(遠くを見て)

杉本

馬鹿にしてるわ(笑)

前原

AOI Pro.にいたころから、THINGMEDIAとは仕事をしていたわけだよね。

関口

THINGMEDIAという会社や、佐藤一樹さんの名前は、AOI Pro.に入ったころから聞いていたんです。

一緒にゲームの案件をやっていた人たちが、結構つながっていたので。山本琢也監督も、大澤さんもそうだし、制作の仕事を教わった先輩も。コミュニティがすごく近かった。

それで、コロナのころに山本監督が退職して、その一年後には、ずっと一緒にいた先輩も退職して。結構、寂しかったんですよ。コロナもあって、会えないタイミングだったし。

関口

会社ですれ違ったら「おーい」って言うような人が、いなくなるので。結構、普通に寂しいじゃん。

前原

社会人になると、卒業式とかないじゃん。コロナのタイミングだったら、メール一つで終わっちゃったりするし。

関口

その人たちの行き先がどこかというと、こぞってTHINGMEDIAなわけですよ。

前原

それは意識するか。「何やってるんだ?」って。

関口

そう。ゲームの仕事をやるチームをつくっている、という話を聞いて。その人たちとは引き続き仕事もしていたので、編集でTHINGMEDIAに行く機会があったんです。そのとき、一樹さんに初めて会って。「あ、噂の人だ」って。

AOI Pro.では制作をしていた先輩が、THINGMEDIAではプロデューサーとして、いろいろな仕事を持って、楽しそうにやっている。忙しそうだけど、すごく大きくなっているように見えて。

自分も挑戦した方がいいのかもしれない、と思ったんです。加えて、呼んでくれるというか、必要としてくれる場所があった。それで、「やってみよう」という気持ちが強くなっていきました。

前原

THINGMEDIAに入ったのが、2023年?

関口

そうだね。

仕事を、自分で取りに行く。

前原

入社して半年くらいで、会社として大きな壁にぶつかる時期があったんだよね。僕が入る前のことだけど。それでも前を向こうとしたわけじゃないですか。そこからは、どうだったんですか。

関口

衝撃というか戦慄が走るというか。もう2度としたくない経験なんだけど。
でもその後、やらなきゃいけないことは結構、明確になったんですよ。まず、自分で仕事を取れるようにならなきゃいけないなと。

もちろん、自分が担当したことで、継続していただけるようになった仕事もあった。でも、それまでは、ずっと仕事がある状態でもあったので。自分から動かなきゃいけない意識が薄かったんですよね。

でも、その壁に当たってからは自分たちの資料をつくって、お客さんに持っていったりして。今も、そこから発注してくださっている方がいます。

自分自身の成長には、つながっていると思います。

前原

そのあと、ショートドラマをやったりもしたじゃない。

関口

会社として強くならなきゃいけない、となったときに、「じゃあ、何をつくろう」と考えて。働き方を変えよう、という話を一樹さんとしていたんです。

エンターテインメントという大きな括りであれば、アニメでもドラマでも、そういうところへ行く可能性はあるでしょう、という考えもありました。その中には、ゲームも含まれるわけだから。

そういう中で、自分たちが権利を持てるものをつくった方がいい、という考えで、ショートドラマをつくることになりました。短かったけど、半年くらい。やったのかな。

前原

2024年の春から夏か。そこから一度、ショートドラマに区切りをつけて、ゲーム映像に戻ってくる。

関口

そうですね。

新しい名前の前で。

前原

ゲーム映像をやるチームを、もう一度つくろうという話になったんですよ。会社からも、ゲームはうちの強みだから「そこをお願いします」と明確に言われて。

ゲームチームをもう一度集めよう、という話だったんだけど、僕は昔から「戻る」っていう言葉が好きじゃないんですよ。前にあったチームに戻る、ではなくて。そんなことはなくて、前進しかありません、みたいな。

だから、新しく掲げていかなきゃいけないし、みんなのモードを、全く違うギアに持っていきたかった。

それで、2025年の二月に、初めてみんなに「ΛυΛμε.」という文字の並びをポンと見せて。「これ、あやめって読みます」と言ったんですよ。最初のサイトにいた五人に、よーいドンで見せたんだよね。

あのときの感じは、おもしろかったけどね。誰も「あ、はい」っていう感じじゃなくて。「これ、何だ?」って。

その「は?」となるのがよかった。知っているものだったら、「ああ、あれね」となっちゃうじゃん。でも、知らないから「は?」となる。説明するのに時間はかかるけど、その分、唯一無二のものになる。

「こうあるべき」を外す。

――ΛυΛμε.は、楽しいですか?

関口

まだ「楽しい」と思える領域までは、至っていないかな。自分が思ったものだったり、つくりたいと思ったものを、素直に出せないというか。そういう感覚はまだあって。

それは、もちろん何かのせいではなくて、自分の中のことなんですけど。広告映像をやってきたからこそ、与件があったり、映像をつくるなら尺があったりするじゃないですか。そういう考え方が、自分に染みついているのを、すごく感じていて。

自分は、「こうあるべきだろう」で生きてきたから。そうやって身についた考え方をいったん外すのが、自分の中ではすごく大変なんです。

前原

ΛυΛμε.では、自分の信じるもので人の心を動かす、ということをやろうとしている。自分が正解だと思っているもので、人を感動させるって、難しいよね。社内に対しても難しい。会社だし(笑)

まず一緒にやっているΛυΛμε.のメンバーから「おお、すげえ」と言われるものをつくらなきゃいけない。身内の心が動かないもので、世の中の心を震わせられるとは思っていないんです。でも、その内側のメンバーも、いろいろなものを見ていて、目が肥えている。自分たちに対するハードルも上がっていくから、そこがすごく難しい。

扉の前で。

――その苦悩は、晴れそうですか?

関口

晴れると信じて、やっている感じだよね。だから晴らしたい。晴れたときに、違う自分というか、見たことのない自分が見える気がするから。

杉本

関口さんにとって、ΛυΛμε.とは?

関口

難しいんだよなあ、これ。マジで難しいんだよなあ。

杉本

沈黙…。

関口

扉。

前原

すごい言葉きたな。

関口

扉の向こう側、ΛυΛμε.の向こう側に、どんな景色があるのかは、まだわからない。何を内包しているのかも、計り知れないというか。

自分は、まだ閉ざされた扉の前にいる。でも、ΛυΛμε.は別に、その扉に鍵をかけているわけではないんです。ずっと、そこにある。ただ、開けようとすると、意外と重い。

その景色を見るために、今は扉の前に立っている、という感じが、感覚としてはあります。

杉本

ものを生み出すことに苦しんでいる。扉の前にいる。なんかわかるなぁって気持ちもありつつ

でも、今日のこのコラムで、扉が普通に開いちゃっているな、と。
関口さんは、存在するだけでも、もう生み出しているというか。
関口さんと会って、笑わない日がないし。

前原

すごい存在だ。

杉本

だから、もうつくっているんですよ。関口さんという存在で。

関口

….。みなさん、僕はこんな感じでいつもいじられてますよ。どう思います?(笑)
ってなんでコレが締めなんだよ!!!

※本記事は対談の編集原稿をもとに構成を整理しています。