【前編】杉本のΛυΛμε.|TGS2026を振り返って
杉本一就×前原朋之|TGS2026を振り返る前に、僕たちのつくり方を話そう。
「杉本一就と振り返る東京ゲームショウ2026」。藤本が用意した企画名を読み上げるところから、今回の対談は始まった。
ブースはどうできたのか。当日、何が起きたのか。聞きたいことはいろいろある。ただ、その話をする前に、そもそも僕たちは何をつくろうとしているのだろう。杉本にとって、ΛυΛμε.とは何なのだろう。
映像を仕事にしていた人が、服をつくり、空間を考え、梱包のテープにまで向き合う。最初は「だいぶ前原さんの色だな」と思っていた名前の中で、自分の色をどう重ねていくかを考え続ける。
話してみたら、その前段だけで約1時間になった。これはTGSの出展報告へ進む前の、前原朋之と杉本一就の対話。すぐには説明しきれないΛυΛμε.を、杉本の側から、少しずつたどってみる。

杉本 一就(すぎもと・かずなり)|ΛυΛμε. レーベルディレクター。普段はゲーム広告映像のプロデュースを中心に、ディレクションも手掛ける。TGS2026では出展準備、ブースの設計・デザイン、商品や来場者に触れる各種制作物の全体を担った。対談相手はΛυΛμε.主宰の前原朋之。
映像をつくっていた僕らが、物販ブースへ。
今日は対談形式でやっていきたいと思います。今回のタイトルは、藤本さんからいただいた『杉本一就と振り返る東京ゲームショウ2026』という企画らしいです。
すごい。急に背負ってますよね(笑)。
『みんなでやっていきましょう』の中の、まずひとつイベントをやったから、しっかり振り返ってくださいと。藤本さんもいたんだけど、いったん僕たち二人に背負わせて。
ただ、どんなブースをつくったのか、当日はどうだったのかという話の前に、もう少し手前から話したいなと思っています。初めて読む方もいると思うので、まずお名前と、ΛυΛμε.で普段どんなことをしているのか教えてください。
杉本一就と申します。ΛυΛμε.で、レーベルディレクターというものをやっています。これでいいのかな。
普段は主にゲーム広告のプロデューサーで、映像のディレクターをやることもあります。
普段は映像を担っている中で、今回はかなり物理的なものを扱ったわけですよね。改めて、東京ゲームショウではどこに、何を持って出たんでしょう。
東京ゲームショウは幕張メッセで行われる、ゲームの大きなお祭りです。大きなタイトルの会社も、インディーゲームも、海外からの出展もあって、あそこに行けばゲームのいろいろなものに触れられる。
今回は物販ブースのほうに出展しました。主にアパレルで、Tシャツが4種類と、キャップが1種類です。
本体はTHINGMEDIAという、広告映像をつくっている会社。その僕たちが、ΛυΛμε.として、しかも物販で出る。キーボードやコントローラーをつくっているわけでもないから、なかなか想像しづらい形だと思うんです。データを扱っていたのに、急に物を売るという試み。
商品は、テリーのTシャツが2種類、『餓狼伝説 City of the Wolves』のTシャツが1種類、NEOGEOのキャップ。それから、初めて表に出たザッケンのTシャツ。合計5種類で臨んだんだよね。
そうですね。商品のラインナップとしては少ないですけど、それで出ました。
TGS2026は9月17日から21日までの5日間を予定していましたが、台風25号の接近により21日のリアル開催が中止となり、会場では17日から20日までの4日間開催となりました。
ブースだけじゃない。梱包のテープまで、全部つながっている。
今回、杉本さんは実際にどのあたりの業務を担当していたんですか?
出展の申し込みから、ブースの設計やデザインまで。商品の細かい部分はみんなでやっていたものも多いですけど、その全体のディレクションもしていました。
それに付随するショップカードや梱包のテープもそうです。ゲームショウに向けて、何を生かせるか、生かせないか。いろいろ考えていましたね。
一緒にやっていて、お客さんに触れるところの、ほぼすべてをデザインしていたなと思った。テープひとつを取っても、そうなんですよね。
そもそも、出展を決めたタイミングって覚えています? 申し込みの締め切りが5月で、ギリギリまで悩んだ感覚があるけど。
小間数でも悩みましたね。何をやるかはいったん置いておいて、出たいし、出せたら素敵だなという話は、結構前からしていた気がします。
僕は覚えていて、2025年の東京ゲームショウに、みんなでビジネスデイにお邪魔したときなんです。1日目の夕方に物販ブースを見て、泊まって、2日目にもう一回整理して見てみようと。その日に『来年は物販ブースで出る』と、みんなに言った。
正直、そのときは全員、あまり現実味がなかったと思う。言っている本人にもなかったんだけど(笑)。でも、試みとしていいなと思ったんです。ザッケンも構想はあったけど、まだ形にはなっていなかったし、本当に妄想の域を出ていなかった。
実際にできるのか、というのはありましたね。成し遂げられるかどうかが、見えるような、見えないような感じもあった。
それが、僕たちだけでなく、加納や関口、藤本、それからブースを実際に形にしてくれる施工の方、商品や各種制作物のデザイナーさんたちも関わってくれて。いろいろな人と一緒につくっている感じがあった。
その全体を見るのは、大変だっただろうなと思うけど。
監修というより、つくっていたという感じです。腕を組んで『ふむふむ』って見ていたわけじゃない(笑)。
「ΛυΛμε.って、何なんですか?」には、二段階ある。
今回、僕たちはTHINGMEDIAではあるんだけど、ΛυΛμε.を名乗って、多くの方に会ったわけですよね。そこで最近、すごく聞かれるようになった質問がある。『ΛυΛμε.って何なんですか?』って。杉本さんは、何て説明しています?
これ、二段構えなんですよね。まず『何て読むんですか?』がある(笑)。
それは最初からイメージしていたコミュニケーションだから、その会話になっている時点で、よしよしという感覚もあるんだけど。では、何をしているところなんですか、と聞かれたら?
何て答えているんだろう。東京ゲームショウでは『アパレルブランドですか?』って、めちゃくちゃ聞かれましたよね。『ずっと服をやってきたんですか?』とか。そこには、そうではないです、もともとは映像をやっていて、という話をしていました。
明確に『これです』と断言する言い方は、していなかったかもしれないです。友達にも、この1年はこういうことに打ち込んでいると話すと、『どういうことをやっているの?』と聞かれる。それで、ゲームだったり、服だったり、イベントだったりを話すと、何なの、と。否定的な意味じゃなくて、『それを何と呼べばいいの?』という反応になる。
その、一言で何々ですと言えない感じが、すごくΛυΛμε.なんだろうなと思う。僕はゲームや小説をつくっているけど、ブースでお客さんとのコミュニケーションをデザインしている人もいる。映像をつくる人も、みんなを支える人もいる。
端的に言えば『クリエイティブレーベルです』なんだけど、何をつくっているかと聞かれると、ひとつには絞れない。やらないことが、決まっていない感じなんだよね。
確かに、決まっていないですね。クリエイティブレーベルという言葉自体も、何をするのか、ちょっと正体がわからない感じがある。だから僕は、まだ名前がないんだろうなと思うんです。
一生ないんじゃない?(笑) 似た取り組みをしている先駆者たちもいるけど、その人たちにラベルを貼るのも難しい。アーティストなのか、作家なのか。それも含めて、いま貼れるのが『クリエイティブ』というラベルなんだと思う。
『何を』という言葉がついた瞬間に、そのクリエイティブレーベルではなくなっていく感じもあって。僕はそこがいいし、共感しているんです。
自分の特性と、チームや組織が向いている方向が合っていると、自分を生かせるし、やりやすさもあると思う。でも僕は、この意味のわからないほうが好きだなって。何をしようとしているのかは、自分たちの中では明確なんですけどね。
だから検索性とか、説明のしやすさという意味では、恐ろしく低いチームなんだよね。THINGMEDIAのゲーム映像事業では『ゲームに強い』と言っていただける。そういう、はっきりとした強みがあることの強さも知っている。そのうえで、ΛυΛμε.については、自分たちを断定していない感じがある。
アパレルブランドではない。でも、服として評価されたい。
僕たちは『アパレルブランドではないです』と言う。でも、かなり本気で服をつくっているんです。どこかにお願いして、できあがったものをそのまま出すということではなく、生地選びから作業工程まで、つくるプロセスにかなりうるさい。
なぜその工程を踏むのか。刺繍ひとつでも、もう少し手前に合格ラインはあったよね、というところから、さらにもう一段詰める。アパレルではないのに、アパレルとして評価されにいっているところがある。
それはありますね。
服を扱っているお店に並んだときに、『ああ、グッズだよね』『スーベニア的なものだよね』というところに行きたくない。少なくとも、一緒に並ぶものに恥じないものになってほしい。その気持ちは全員が持っていると思う。
そこには行きたくないですね。
その一方で、ザッケンのようなキャラクターがいて、フィギュアもあり、今回、僕も初めて香水も作らせてもらって。何をしているのかを説明すればするほど、『結局、何なんですか?』になる。
では車はやらないんですか、と聞かれたら、全然そんなことはない。旅館だって、旅行に関することだって、みんなそれぞれ好きなものがある。海外旅行が好きな人も、国内が好きな人も、友達と一緒に行く旅行が好きな人もいる。旅行ひとつでも、切り口はいくつもあるじゃないですか。
ΛυΛμε.の車は、つくりたいですね(笑)。
個性の濃いメンバーがいるから、そこからまた広がっていくんだろうなと思う。
前原は「物語」を、杉本は「過程」を話す。

僕個人としては『作品をつくっています』という言葉から、最近は逃げないようにしようと思っています。自分で作品と言うのは、ハードルの高い言葉でもあるんだけど。
その中で大事にしているのは、自分たちの物語をつくること。プロダクトも、言葉も、テキストも含めて、ΛυΛμε.でしか得られないものがあるかどうか。ここでしか得られない栄養みたいなものを、いろいろな形を通して出していく感覚です。
それを言葉だけでは明言しきれないから、VEARTHや『殺ノ華』を始めたところもある。杉本さんには、ΛυΛμε.を説明するときに大事にしていることや、伝え方に気をつけていることはあります?
なかなかハードな質問ですね(笑)。物語というのはわかるんですけど、僕個人としては、過程を大事にするというか。もともとは、結果主義な部分があったんですよ。
できあがったものがよければ、それでいいじゃないですか、という感覚。そこに自信もあったし、楽しさも感じていた。いま、その自信がなくなったわけではないんですけど。
そこへ至るまでに、いろいろ唸った時間もあるし、全然うまくいっていないなという感覚もある。自分一人で取り組んでいることはあまりなくて、基本的には誰かと一緒にやっている。その過程を、大事にしているんだと思います。
ぱっと思いついて、イケてるデザインにしよう、イケてるものにしよう、という薄っぺらい感じでは伝えたくないんです。
『クリエイティブレーベル』という横文字になったときに、何をやっているかわからないのがいいんだ、と雰囲気だけで言われても、という見方をされることはあると思う。でも実際は、割と泥臭く、悩んで、いろいろ考えてやっている。
『薄っぺらくはやっていないですよ』と、そのまま言うわけではないけど。薄っぺらく見えないような振る舞いや言い方は、気をつけていますね。
それは、すごくわかるな。
最初は、「だいぶ前原さんだな」と思っていた。
では、ΛυΛμε.という名前にすると聞いたときの、最初の印象は覚えています? 感覚的には、1年半くらい前の話になると思うけど。
最初は、あまりわかっていなかったですね。名前も読めないし。でも、ぶっちゃけ好きではあるんですよ。ギリシャ文字も、読めない感じも、やかましい感じも好きではあるので(笑)。
ただ、より前原さんの方向のやかましさだな、とは思っていました。自分の完璧なストライクゾーンにはない考え方や、雰囲気をまとったものになっていくのかな、と。
だから、そこに飲まれないように、自分を見失いたくないなというのは、密かに思っていましたね。すごく寄せてしまうというか。そのころは、まだ全然わかっていなかった時期なので、かなり前原さんの色が強いのかなと思っていたんです。
そのとき、今みたいに洋服をつくったりする自分になると思っていた? 具体的な仕事内容というだけじゃなくて、今の自分になっていく感覚というか。
完全には想像していなかったです。割と想定外でした。
仕事で、すごいなと思う大人に会うじゃないですか。直接話したり、打ち合わせで聞いていたり、誰かづてにその人の考え方を聞いたりする。そのたびに『自分はいつ、そうなるんだろう』と思っていたんですよ。それが、僕の中での大人だったんです。
ビジネスマンとして、という話?
人生設計やキャリア設計も含めて、視座が上がる感じとか、ものの見方、考え方。喋り方や、細かい言葉遣いもそうです。いつ自分はそうなるんだろう、と。
いま自分がそうなれているかはわからないです。でも、当時思っていた以上に、自分の考え方が変わっている。それは、ある意味で予想外でした。この1年半くらいの間に、かなり変化はあったと思います。
『だいぶ前原さんだな』という印象は、あの当時は事実だったと思う。自分たちが何をつくっていくのか、どのくらい純粋に取り組めているのか。そういうことを掘っていくと、純度が高まるほど、簡単には説明できないものにもなっていく。その感覚を、名前に出力したところはあったから。
でも、自分の中だけで生み出したというより、名前はまだなくても、今のメンバーがなんとなく一緒に動き始めていた時期でもあったんです。それまでは、それぞれ別の仕事に関わっていて、ばらばらだった。そこから『餓狼伝説 City of the Wolves』のCMで、がっつり一緒にやるようになっていく。その少し手前に、ΛυΛμε.という名前があった。
「自分に何ができるか」から、「自分の色をどう乗せるか」へ。
最初にΛυΛμε.と向き合っていたころと、今とで、違うものはありますか?
まだ前原さんの部分はあると思います。でも、それがいいとか悪いとかではなくて、そこにどう自分の色も乗せていくかは、ずっと考えています。
自分が先陣を切って、アイデアを持って進めていくことは、まだまだやれていないなとも思っていて。今回のゲームショウで、やっと一歩踏み出した感じはあります。でも、そこで止まらずにやっていきたい。空間の設計以外のところでも、やっていきたいです。
最初は、前原さんが主宰するチームの一員として、自分にも何かできることがあるのかな、という感じでした。ゲーム映像の仕事なら、それまでやってきた知見もあるから、できることがあるんだろうなと思っていた。
でも、まさか服をつくって出すようなことに、自分が割と中心に入って取り組むとは、全然想像していませんでした。違いがあるとすれば、ΛυΛμε.が変わったというより、自分の立ち位置やスタンスが変わったという感じです。
ΛυΛμε.というものに対して、ずっと向き合い続けているんだね。
そうだと思います。日々考えていますね。
これは、杉本一就のΛυΛμε.だった。

今回、ありがたいし面白いなと思ったのが、『前原だけでやっていると広がらないぞ』という意識を、割と全員が共通して持っている感じなんです。僕自身を含めてね。
自分はストライクゾーンが狭くて、タイトでニッチなものをやろうとする。伝わりづらいものを、あまり噛み砕かずに『これで』と出すところがあるから。今回のブースは、その咀嚼の結果だったと思うんですよ。
『おしゃれ』『素敵』という声をいろいろいただいたけど、僕がやっていたら、そういう声をもらえるものにはならなかったと思う。
前原さんがやっていたら、ということですか? そうですかね。
自分の中では、やるならこうだな、というものがあって。もし自分がディレクションしていたら、もっと嫌な浮き方をしていた気がするんです。そこにいる人の心には響かないものを、あえてやっていた可能性すらある。
今回は、ちゃんと咀嚼した結果、共感を得られるかっこいい場所になった。その翻訳をしてくれていた感覚を、特に感じました。
共感は得られていたのかな。ぱっと見で、何かいい感じだな、というところでは、得られていたのかもしれないですね。
その共感を得られるものは、自分だけではつくれなかったと思う。だから、あれが杉本一就のΛυΛμε.だったんだろうなって。杉本一就が美しいとする世界観で、チームの内側も含めて、全員がそこに共感していた。ひとつ、見せられた感じはありますよ。
そうですかね。嬉しいし、誇らしいですけど、まだひとつの表現ですからね。
でも、そのひとつを出すのにもハードルはある。終わってしまうと『あんなの』と思いがちだけど、自分が踏んだプロセスも、関わってくれた人たちの過程も、相当あるから。簡単に『あんなの』とは言えないくらい、すごいことだったと思う。
つくりたいのは、服や空間だけとも限らない。
いま、自分がやりたかったことは、ΛυΛμε.の中でやれていますか?
やれていますし、これからやっていこうと思っていることもあります。そこは、お楽しみにという感じです。もっと大きいこともしたいし。
大きいことというのは、イベントみたいな話?
イベントというか、昔から言っていますけど、村をつくりたいとか。
市町村(笑)。
わからないですよ。でも、面白そうだなと思うことは、やっていきたい。ものをつくるのは好きだし、謎の変な自信もあるので。それをできているのは、すごく贅沢な状況だと思います。
映像、服、小説、キャラクターと、いろいろなものがあるけど、共通しているものはあると思います? 自分の中で、共通させようとしていることでもいいんだけど。
僕は個人として、自分の一貫性に沿ってやりたいと思っています。自分の名前がつくものには一本、串を通している感じで、それ以外のものはつくらないと決めているところもある。思いついたアイデアを、やらずに終えることも結構あるんです。
一貫しているもの、何なんでしょうね。外から見たら、あるのかもしれないですけど、自分ではあるのかなと思う。
ただ、自分がつくったり生み出したりしたものに、多くの人に触れてほしい、見てほしいとは思っています。世間に寄せてつくるというより、自分がやりたいと思ったものをつくって、そこに共感してくれたら嬉しい。その思いは、一貫してあるのかもしれない。
かなり個人的な話で、結局、自分が、自分がというところはあるのかもしれませんけどね。『自分の思いに共感してくれ』という熱は、何をつくっても同じかもしれないです。
「ΛυΛμε.らしい」の正体は、まだ考えている。
では、『ΛυΛμε.っぽい』『ΛυΛμε.らしい』という言葉はどうですか。何かを進めるときに、自分たちの中で、なんとなくそうだよねと思う感覚があるじゃないですか。その『らしさ』を一度言葉にしてみると、何でしょう。
ちょうど自分でも、『ΛυΛμε.らしさって何だっけ』と悩んでいたんですよね。まだ結論は出ていない気もするし、全然正解はわからないですけど、『本物を感じられる』というところなのかな、とは思いました。
本物って何やねん、という話なんですけど(笑)。込めている熱なのか、選んでいる素材なのか、価格なのか。いろいろな要素が入っていると思う。考えている量や、向き合っている姿勢、熱意が、ものの質量以上の重厚さとして感じられる。そういうものを、ΛυΛμε.らしいと言えるのかな、と最近は思っています。
みんな、悩んでいるよね。
例えば、コンビニで『どれを選んでもな』となるような感覚には、なりたくない。コンビニが悪いということではなくて、毎日行っている中で、いつも『これが食べたかったんだよな』とはならないじゃないですか。
そういうよりも、『これ、これ、これ』と感じるもの。その感覚を『本物』と呼んでいいのかはわからないし、じゃあ何が偽物なんだ、という話にもなるんですけど。今は、そういう言葉にしておこうかなと思います。
知られてから、ちゃんとやるのでは遅い。
僕は、いまのその『らしさ』には、試行錯誤の回数も関わっている気がしています。みんなが、それぞれΛυΛμε.から課されているお題でもあると思うんだけど。
もちろん、僕自身も楽ができるならしたいし、追い詰められたいわけじゃない。でも、まだ知ってもらえていないときに、すでにちゃんとやっていないといけない。知られてからやるのでは手遅れだ、という気持ちがあります。
知ってもらえたときに、『嘘じゃん』と思われたら、恥ずかしいことだから。
それが、偽物とかフェイクという感覚につながってしまいそうですよね。
刺繍もシルクスクリーンもそうだし、小説もそう。書いてきた人間じゃないなら、面白くなるまで書けよ、と自分に思う。初稿で、みんなから『いいですね』と言ってもらえると思うなよ、と。
逆に、初稿でいいねとなったら、二稿目はもっと大変です。何もないところから出てくる最初のものには驚きがある。でも、そこからどれくらい変われば、人はもう一度感動するのか。つくっている側は、最初が80%で、あと何回かで100%へ、と思っていても、見ている側はもっと期待するんですよね。
初稿のアイデアがすごくよかったら、ここからどうなってしまうんだろう、って。まだ時間もあるぞ、と思いますからね。
自分が映像をお願いするときもそうだし、お願いされるときも、そうなんだろうと思う。そのとき『いや、そういうものじゃないんだよ』と言うのか、『初稿でここまで来たんだから、期待していてよ』と言うのか。僕は、期待していてよと言えるほうでありたい。
『殺ノ華』も、1巻でここまで書いたんだから、2巻、3巻はもっと面白くなるはずだ、と自分に負荷をかける。だから、最初に書いた2巻が全然面白くなくて、リライトしていったら54稿くらいになっていた。
すごい。
でも、54稿だから何なんだ、という話でもあるんです。54回重ねて、それで面白いのかどうか。小説を書いてこなかった人が小説を書くなら、それくらいのつもりで取り組まないと、と思う。
その回数は、別に聞かれないですからね。買って読んだものがすべて。
そう。好きになってくれて、そこに価値を感じてくれた人に、あとから『そのくらいやったんです』と言えば、頑張りましたねとなるかもしれない。でも、努力を評価してもらおうとは思っていない。
面白いものをつくるために、それくらいやるというだけ。持っているものを、どこに全部ぶつけられるか。そういうところも、ΛυΛμε.なのかなと思います。
「らしさ」は、これからつくっていく。
では、杉本さんにとってのΛυΛμε.は、いままさにつくっているところなんだね。自分の中で、その『らしさ』を。
そうですね。つくりたいです。そのためにも、外に出していくものがなければ、らしさも何もない。そこはどんどんやっていきたいですね。
いったんΛυΛμε.については、このくらいにしておきますか。すごく喋ったね。1時間くらい。ここまでのボリュームにするつもりではなかったんだけど(笑)。
すごい量ですね。これも、これでコラムになりますね。
この話を踏まえてTGSの記事を読んでもらってもいいし、TGSの記事から杉本一就が気になって、こっちを読んでもらってもいい。
最後には、記事の見出しを「俺のインスタをフォローしろ」にするのはどうか、という冗談になった。「やばいって、その記事」「思わずタップしちゃうかもしれない」「俺の、とか言わないし」。話は、最後まで少しずつ脱線している。
何をつくるチームなのか、まだ一言には収まらない。けれど、杉本が何を大事にして、この名前と向き合っているのかは、少し見えてきた。飲まれたくないと思っていた場所で、自分から先に立ち、自分の色を重ねる。その最初のひとつが、TGS2026のブースだった。
杉本のΛυΛμε.は、まだつくられている。その先が気になった方は、どうぞこちらから。
杉本一就のInstagram|@sugimoto_kazunari
約66分の音声対談をもとに、発言の重複や言いよどみを整理し、話題ごとに再構成しています。掲載画像はΛυΛμε.公式サイト・公式ショップの既存素材です。