ΛυΛμε.
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「店、出せるわ。」杉本が“人生1位のナス”をつくった話。

前原・杉本・関口、ある日のランチから。

「僕が店を出す話、しますか?」

ランチを待っているあいだに、杉本がそんな話を切り出した。前原と関口が聞くのは、開業資金のことでも、物件のことでもない。自分でつくったご飯がうますぎて、店を出せると思った。その話だ。

「店を出せると思った瞬間?」と話を向けると、杉本は言い直す。「確信した瞬間」。まだ一皿も出てきていないのに、ずいぶん強い。

主役はナス。そこに、えびの油と、豚肉と、しめじ。料理の名前を聞く前からツッコミが入り、途中でカルディの巡回報告になり、最後は架空のお店にドリンクが増えていく。三人の昼食前の会話を、そのままの温度でお届けします。

人生一位のナス。まだ、名前がない。

「これ、二人は絶対好きだと思った」

杉本はそう前置きしてから、今回の一皿を「ナス史上、僕の人生一位」と紹介する。ナスの歴代ランキングが、ある夜、自宅で更新されたらしい。

「ナスの何をつくったの? 煮浸し?」

肝心の料理名を聞かれると、急に説明がむずかしくなる。杉本自身も、できあがったものを、この世にある料理の名前でどう呼べばいいのかわからないという。ならば工程から聞こう。いや、その前に、そもそも何を目指していたのか。二人の質問で、話はいったん出発点まで戻る。

きっかけは、居酒屋で食べたナスの揚げ浸しだった。甘えびの風味がするオイルを使った一皿で、それを食べた時点では、そちらが「人生一位のナス」だった。

外でおいしいものを食べると、自分でも再現できないかと思う。杉本には、そういうところがある。ただ、今回はえびのオイルが必要だ。冷蔵庫を開ければ、いつでもあるような調味料ではない。

そこで出会ったのが、カルディの瓶入りのえび油。食べるラー油のような見た目で、具のようなものも入っている。探していた風味を足せそうな、その一本を見つけた。

「最後のピースが、ここにあった」

料理名はまだ決まっていない。でも、この時点の杉本の中では、もうだいぶ完成に近づいている。少なくとも、気持ちの上では。

会話に出てきた「北海道から 万能香味えび油 90g」
カルディコーヒーファーム公式オンラインストア

最後のピースは揃った。ナスが待てなかった。

えび油を買って、ナスも買った。あとはつくるだけ。ところが、杉本の話には、ここで一度、空白の期間が入る。

最初に買ったナスを、ダメにしてしまったのだ。

「農家の人にごめんなさい」

すぐに謝罪の機会が設けられる。本人にも、もちろんつくる気はあった。えび油を見つけるまでは、むしろ早かった。けれど、ちょうどTGSの忙しい時期と重なってしまったという。

話の途中で、牛乳もちょっと残してダメにしたことが発覚する。すると今度は、「酪農家の人にごめんなさい」。ひとつの自炊話なのに、謝る相手が増えていく。

「ごめんなさい、多いですね」

そんな寄り道を経て、杉本はようやくナスを買い直した。週末、夜ご飯をデリバリーで頼もうか迷っていたときに、その存在を思い出す。そうだ、ナスがある。今度こそ、つくろう。

ただ、晩酌のお供にするには、ナスだけでは少し物足りないかもしれない。そう考えたところで、また話が止まる。

「主演だけどね」

ナスへのフォローが入る。杉本も、ナスには申し訳ないと言う。すると二人からは、いろいろな方面に気を遣いすぎだ、とツッコミ。まだ火をつけてもいないのに、なかなか忙しい。

結局、ナスに加わることになったのは、肉としめじ。実家で食べていた料理に、そんな組み合わせがあった気がする。そちらは焼肉のたれ系の味だったけれど、今回はえびでいく。主役を決めて、脇を固めて、いよいよ調理が始まる。

揚げ浸しのつもりだけど、揚げてはいない。

ここで杉本から、さらりと大事な告白がある。

「作り方、全く調べなかったんですよ」

目指したのはナスの揚げ浸し。でも、揚げ浸しのつくり方は知らない。では、実際にはどうしたのか。

「揚げ浸してない。だって、焼いたもん」

揚げ浸しの話を、ずっと聞いていたはずだった。正確には、揚げ浸しを想像しながら、焼いていたらしい。杉本の中では「焼き浸し」。料理名がわからなかった理由が、少しわかってきた。

まずナスとしめじを焼き、一度ボウルに取り出す。肉は別に焼く。ここまでは、むしろ丁寧に見える。ところが杉本によると、どこで味をつけるのかわからなくなって、そういう手順になったのだという。

肉を焼いているあいだに、ボウルの中の野菜に調味料を加える。料理酒、みりん、白だし。家にあるものを見ながら、「これを入れたらうまいだろう」という感覚で足していく。

聞いている二人が気になるのは、酒とみりんまで、焼き終わった野菜のほうへ入れていることだ。ボウルに? 焼いたものの中に? 確認が重なる。でも、いったん話を先に進めよう。分量はいったい、どれくらいなのか。

「白だしが、2秒」

大さじでも、小さじでもなかった。

「一杯とかじゃなくて、秒数なんだ」

続くみりんと酒は、それぞれ1秒くらい。ボウルの中は、けっこうたっぷりした感じになった。「大丈夫かな」と思いながらも、調味は続いていく。

次は、冷蔵庫にあった瓶入りのおろしにんにく。こちらの単位は「大盛り1」。さっきの秒数からは離れたが、何のスプーンで一杯なのかが、まだ決まらない。大きいスプーン? 小さいスプーン? プリンを食べるスプーン? 話している本人も、思い出そうとしている。

そして、最後のピースだったえび油を「大盛り2か3」ほど。焼いた野菜と混ぜ、肉が焼けたところへ、まとめてフライパンに戻す。最後にもう一度、全体を混ぜて火にかける。

「ちゃんと火、入れたじゃん」

聞いている側も、ようやくひと息つく。その工程を経てできあがった料理を、杉本はとにかく食べてほしいと言う。自分の中では、人生一位。話しぶりだけで、相当うまかったことが伝わってくる。

改めて、料理の名前を尋ねる。

「ナスの揚げ浸し、海老の風味を香らせて」

名前は、揚げ浸しに戻っていた。

会話に出てきた材料:ナス、豚肩ロースの薄切り、しめじ、料理酒、みりん、白だし、瓶入りのおろしにんにく、万能香味えび油。分量の「秒」「大盛り」は杉本の説明のまま。計量して再現を確認したレシピではありません。

もう一皿が、すでにバカッタレ。

杉本は、その夜、最初から白いご飯を食べるつもりではなかったという。あくまで晩酌。ナスの料理と、もう一皿でいく予定だった。

その、もう一皿もカルディから始まる。買ってきた生ベーコンに、「バカッタレ丼のたれ」を混ぜ、上に卵黄をのせる。ユッケ風のおつまみだ。

「それがもう、バカッタレ」

商品名が、そのままツッコミとして成立してしまった。ナスと豚肉とえび油の料理に、生ベーコンのユッケ風。晩酌のお供としては、なかなか強い二皿である。

ところが、実際に食べ始めてみると、ナスがあまりにうまかった。ついにパックご飯を温めることになる。おつまみのつもりだった料理が、白いご飯を呼んできた。

「一パック?」

「一パックに抑えました」

食べた量の報告に、ちゃんと自制した感じが添えられる。さらに聞けば、豚肩ロースも一度で使い切ろうと、200グラムくらい、いや、もう少し、200〜300グラムくらい入れたという。しゃぶしゃぶ用のような薄切り肉だった。

量の話になると、二人の反応も変わる。「どか食いやん」。いつ食べたのか、別の日に一緒に外食したあとではなかったのか、と記憶の照合まで始まる。さっきまで料理の工程を確認していたのに、今度は食事の時系列を確認している。

それは別の日だった、とわかって、いったん落ち着く。それでも杉本がいちばん伝えたいことは変わらない。人生でいちばんうまいナスだった。そして、二人にも食べてほしい。

バカッタレ丼のたれ 200ml
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カルディ公式で「生ベーコン」を探す
会話だけでは購入した商品の規格を特定できないため、検索ページを掲載しています。

「カルパト」って、みんな知ってる言葉?

ここまで聞いたところで、この話はコラムになるのではないか、という話になる。料理の写真がなくても、今の説明からイメージをつくれる。工程も、使った商品も出てきた。商品リンクも添えたら、読んだ人が探せる。この記事は、そんな会話の中から生まれている。

「今、考えてたら腹減ってきました」

昼食を待ちながら、別の日の夕食の話で、お腹が減っている。

杉本によると、えび油は、その後に見たとき「お一人様1個まで」になっていたらしい。買ったときには、そんな表示はなかったという。

「何個買ったの?」

「1個だけです」

制限があってもなくても、本人の購入数は変わらなかった。

その流れで、杉本からまたひとつ、聞き慣れない言葉が出てくる。「結構、カルパトしたんですよ」。カルパト? カルディパトロールのことだという。

「カルパトって言うの?」

すでに世の中で使われている言葉なのか。自分たちが知らないだけなのか。二人が反応すると、杉本は、自分が勝手にそう呼んでいるのだと説明する。流行を取りこぼしたわけではなさそうだ。

それでも会話には「ミーム王」という呼び名まで飛び出す。えび油を探す行動に名前がつき、それを説明した本人にも、別の名前がつく。ランチの雑談は忙しい。

やがて、こういう記事のジャンルを「くだらない話」にしたらどうか、という案が出る。杉本としては、うまかった話を共有しているのに、くだらないとは何事か、という気持ちになる。

でも、二人に言わせれば、これは単なる「うまかった話」でもない。「店を出せると確信した話」だ。そして、間髪入れずに追い打ちが入る。

「しかも、確信しただけでしょ」

たしかに店は、まだ出ていない。

いま初めて、「揚げ浸し」に向き合う。

もしシリーズになったら、また料理をつくらなきゃいけない。関口版の「店を出せる」もあるかもしれない。そんな話をしつつ、杉本は、そもそも家でつくってみたくなる理由を話す。

外で食べて「これ、うまかったな」と思ったものを、自分でも再現できたらうれしい。でも、スーパーで材料を揃えられそうにない料理や、つくり方が想像できない料理には、なかなか手が出ない。今回はナスの揚げ浸しだったから、自分でもつくれるかもしれない、と思ったのだ。

するとまた、和食をつくる人たちへの「ごめんなさい」が必要なのではないか、とからかわれる。ナス、農家、酪農家。その話は、まだ終わっていなかった。

そもそも揚げ浸しとは、揚げてから浸すものではないか。そう話しているうちに、杉本は、料理名そのものと改めて向き合うことになる。

「揚げ浸しっていう言葉に、初めて向き合いました」

それまでは「揚げ浸し」という、ひとつの料理があると思っていた。「揚げる」と「浸す」を別々の動作として考えていなかったという。人生一位の料理ができたあとに、目標にしていた料理の名前の意味が、追いついてきた。

つくり方を調べず、分量も秒数と大盛りで説明する。それでも本人が何度も言うのは、「食ってほしい」。二人はまだ、その一皿を食べていない。どんな名前で出てくるにせよ、実食の機会はほしいところだ。

まだない店に、カルピスの牛乳割りが加わる。

話は、なぜ牛乳が少しだけ残ってしまったのか、というところに戻る。杉本は、カルピスを牛乳で割って飲むという。ちょうどよく使い切るのが、少しむずかしいらしい。

「ラッシーみたいになるもんね」

知っている側には、すぐ伝わるおいしさだった。一方で、まだその組み合わせを試していない側には、「その世界を知らないで生きてる」と、なかなか大きな言葉が向けられる。ナスの話に続いて、今度は飲み物の世界が開こうとしている。

「それ、絶対好きだな、俺」

そんな反応を受けて、杉本は言う。

「僕が出す店には、それもあります」

メニューが増えた。ナスの揚げ浸し、海老の風味を香らせて。生ベーコンのユッケ風。そして、カルピスの牛乳割り。

ただ、ナスの料理と牛乳割りが同時に出てくるのは、ちょっと違うのではないか。ここにはすぐに意見が入る。まだ存在しない店なのに、提供の順番には検討の余地がある。

甘い飲み物の話は、さらにクリームソーダやコーラフロートへ広がっていく。杉本は、おいしすぎて両方飲んだこともあるという。食後のメニューも、なかなか充実しそうだ。

「カルピス」の牛乳割り|公式レシピ
カルピス®カフェ。気になった人はこちらから。

お菓子の食べ方まで、話が止まらない。

牛乳をちょっとだけ残して冷蔵庫へ戻す。それはお母さんに怒られるやつだ、という話から、今度は食べ方の話になっていく。

フライドポテトは一本ずつ食べるのか、何本かまとめていくのか。プリッツを袋から半分だけ出して、一気に食べるのではないか。話は、どんどん大げさになる。

「したことないだろ」

「してないよ」

本人からの否定も、しっかり入っている。ここから先は、実際に見た食べ方の報告というより、どれだけ変な食べ方を思いつけるか、という応酬だ。

チョコのついていない持ち手から食べたら、最後にチョコを握ることになる。トッポをずっとくわえていたらどうなる。ヤンヤンつけボーなら、棒より先にチョコへいくのではないか。ついには、小指がつけボーになる、というところまで進む。

昼食前の三人が、まだ食べてもいないお菓子の食べ方で笑っている。ナスの料理の説明からは、ずいぶん遠くまで来た。

店は、レモネードスタンドくらいの感じで。

それでも話は、もう一度「店を出す」に戻ってくる。杉本が思い描いているのは、がっちりと構えた飲食店というより、もう少し小さく、気軽なものらしい。

たとえば、子どもがレモネードを売っている、ああいう感じ。ボーイスカウトの話が出ると、杉本にも経験があるという。自分の中の歴史として、その感じはある。

では、レモネードを売っているのはボーイスカウトなのか、普通の子どもなのか。庭先なのか、屋台なのか。そのイメージは、いったいいつのアメリカなのか。最後まで、三人の思い浮かべる景色が、きれいには揃わない。

そうこうしているうちに、目の前に、本日の昼食がやってきた。

「うわー、うまそう」

さっきまで人生一位のナスについて話していた三人の関心が、いま届いた料理へ向く。まだ開店していない杉本の店の話は、ひとまずここまで。

ナスの正式な料理名も、にんにくを量ったスプーンも、店の場所も決まっていない。それでも、「これ、二人は絶対好きだと思った」という杉本の言葉だけは、最初からずっと変わらなかった。

まずは、いま目の前にあるランチから。

「いただきます」

前原・杉本・関口のランチでの会話を、読みやすさのために編集・再構成しています。商品リンクは公式サイトを掲載しています。